とある兄弟と肝試し

 勤めていた配管工会社がつぶれて無職のマリオと、大手貿易会社に勤めるルイージはいつものように食事後の談笑をしていた。
「あー最近熱いよなルイージ」
「そうだね兄さん。部屋から出たく無くなっちゃうよね」
「そこでだルイージ。こんなチラシがあるんだが」
 マリオは手元にあるチラシをピッとルイージにはじく。
「『肝試し大会』?」
「そうそう、ずっとエアコンに当たってるのも体に悪いからさ、ピーチとデイジーを誘って行こうぜ!」
「うーん。わかった! 行こうか!」
 あくる日の夜、四人は会場の廃校へと向かった。イベントが始まり、廊下を四人は歩く。
 そのとき、ガタガタガタッと大きな音がした。
「きゃぁぁああ!」
 マリオは大きく跳躍し、天井近くの柱にひっついていた。
「うわー。凄いジャンプ。さすが兄さん!」
「マリオ……」
 その後も小さくお化けが出てたりしていたが、驚くのはマリオぐらいだった。小さな町でのイベントなのでしょうがないかな、と残りの三人は思っていた。
「さて、最後に理科室に行こう」
 理科室は窓が開いている以外、何もない。ピーチは窓に腰掛けていた。
「あぶないわよ、ピーチ」
「大丈夫大丈夫」
 そのとき、天井から棒のような物が一斉に勢いよく降りてきた。よく目をこらせば蛇に似せた棒だと気づくが、怖さより驚きが勝った。ピーチは驚いた拍子に体を外に投げ出してしまった。
「きゃぁああ!」
「イヤァ! 誰か助けて!」
 そう叫ぶデイジーの横を、赤い風が通り抜けた。
「ピーチ姫!」
 マリオはピーチを空中で抱えると、そのまま壁を蹴り、外にある砂場に落ちた。
「あ、あれ? 体が勝手に動いて……」
 慌てて落ちた二人を追ってルイージとデイジーがやってきた。二人の無事を確認すると、デイジーは言った。
「きっとピーチ姫を助けるのが日課になってたから、反射的に体が動いたのかもね。ホント今のが一番怖かったわ」
「うーん。あんまり覚えてないけど、まあ良かった」
「かっこよかったわよ! マリオ!」
 チュッと音がして、マリオの頬に違和感が残った。
「え?」
「また私を守ってね」
 腕の中にいるピーチは柔らかな微笑みでそう答えた。
「お熱いことねー。さ、帰りましょうか」
「兄さんはやっぱり凄いね!」
 こうして四人の肝試し大会は、その役目を無事果たして終えた。